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やっぱね、溜め込むのは良くないよ
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お久しぶりでございます。
先日のテニフェスで見事にテニス熱がぶり返しまして
と言うよりもむしろ病むレベルで大菊熱が上がってしまいまして
とりあえずリハビリがてらSSを1本。

昔買ったどーじんし読んでたら致してる大菊が多かったんだけど、中学生らしく精一杯なのもかわいいよネ!!ということで
書きながら何度か頭を殴りました(大菊が愛し過ぎて)





+ + + + + + + + + +





多分これが、いわゆる「ハツコイ」ってやつなんだと思う。
保育園とか、小学校とか。カワイイって思う女の子はいたし、誰が好き?と聞かれればそのたびに違う名前を挙げていた。けれど、それは恋なんかじゃなくって。今思えば、単純に「好き」か「嫌い」の二択だったんだと思う。


「…………英二、手が止まってる」
「…………へーい」


陽はすっかり暮れ、長くながく伸びる影。俺は大石が日誌を書き終わるまで、明日の小テスト勉強をすると言う体で部室に残る言い訳を見つけた。しかも科目は大石が得意――かつ、俺の苦手な――英語、というわけで、何とかおチビを帰し――大体おチビはバカにするから嫌だ!――単語帳を開いてみたものの、あれだけ身体を動かした後に集中出来るわけもなく。


「眠たいんだろ?先に帰ってもいいのに」
「そんなことないもーん」


たまには「待ってて」くらい言えってんだ。不貞腐れた俺のようにぴょんぴょんと跳ねる癖っ毛を、優しくなでてくれる大きなてのひら。まだぽかぽかとあたたかいそれで触れられると、まぶたがとろんとなるくらい気持ちイイ。大好きな飼い主に撫でられる猫ってこんな気持ちなのかな、なぁんて。


「ほら、やるならちゃんとしないとまた補修になるぞ」
「またって失礼だなー。いーもん、ヤマはったしっ」
「へぇ、どれが出ると思う?」
「んーとね、あいらぶゆー」


机の上に突っ伏したまま、上目づかいで満面の笑み――したのに、あからさまに目ェそらすなっつーの!
目を合わせるのが気まずかったのか、ため息を吐きながらぐっと手のひらに力を込める。俺の視線を低く戻すと、照れ隠しのようになでなでを再開した。……何だろう。気持ちいいし、うれしいけど、何だか誤魔化されたようでちょっとムカつく。
されるがままなのも何だか悔しくて、負けじとその手を取った。大石の手は、俺のそれよりほんの少しだけ大きい。指はすらっと長いけれど、ちょっとだけごつごつしているのは、毎日ラケットを握っているからだろう。他の人は知らない、彼の努力の証。
そう言えば触れるばかりで、こんなに見つめる機会がなかったそれをしげしげと一度眺めてから、その一本一本を確かめるようにゆっくりと指先でなぞる。俺にされるがままの大石も、気が付けば日誌を書く手が止まっていた。

そうだよ、折角なんだからちょっとは俺に構いなさい。

これ見よがしに指先をなぞり、ある一本の指に行き当たる。手のひら越しに目が合うと、いたずらに笑って見せた。


「あとね、もいっこ」
「…………何?」
「めりみー!!」
「…………英二……」
「んー?」
「めりーじゃなくて、どっちかといえばまりーだよ」
「そーゆーことじゃないっつの!」
「いや、でもさ」
「いーじゃん、大石には通じたってことでしょ?」


左手の薬指、トクベツな指。それをぎゅっと握ると、大石は困ったように笑う。


「そんなこと、簡単に言っちゃいけません」
「どーして?」
「…………だって、英二には俺よりも好きな人が出来るかもしれない」
「そんなことないもん」
「わかんないだろ?俺よりも好きな人が出来て、その人と一緒にいた方が幸せになれるなら、俺はその人と一緒にいてほしいな」
「………何ソレ」
「……英二?」


薬指、トクベツな指。俺の薬指が大石以外の人と約束するなんて考えられない。
今だけじゃなくて、これからも、ずっと。ずっとずーっと、俺が知ってる「ずっと」の中で、一番長い時間。

それって今だけじゃなくて、多分、死ぬまで。ずーっと。


「ホント大石ってカタいよねェ」
「カタいって……」
「いーんだよ、俺たちまだちゅーがくせーだよ?今から将来のコト不安がってたら手塚みたいにハゲちゃうし胃に穴が開きっぱなしだよ!?」
「手塚はハゲてないだろ……」
「まーたそうやって誤魔化す!だってコレ初恋だよ?初めての恋人だよ?もっと浮かれてさ、ずっと一緒に居たいって思っちゃダメ?!」
「…………いや…………」
「ダメ?!」
「………………ダメじゃ……ない、です…………」


何でお前が耳まで真っ赤にして照れてるんだよ!ばか!言ってるこっちが恥ずかしくなるわ!!そんなところも可愛くて大好きなんだけど!!

大石の気持ちが伝染して、何だか顔が熱い。急に羞恥心が勝ってきて、思わず机に顔を伏せた。繋いだ手はそのままで、もう一方の手のひらが、俺の髪を優しく梳く。


あったかくて、うれしくて、しあわせで。思わず笑顔になっちゃって、それでも胸がぎゅっと痛くて、苦しくて、涙が出そうになる。
全部ぜんぶひっくるめて、これが人を好きになるってことで これが 恋 なのだと。
この感情すべて、君が教えてくれたんだ。


ねぇ、お願いだから 繋いだこの手を離さずに


「…………おーいしは?」
「ん?」
「おーいしは、俺とずっと一緒に居たい?」
「…………うん」


机越しに、そっと胸に抱き寄せる。大石の顔を見ることは叶わないけれど、それでも彼の体温とにおいに満たされて、思わず眩暈。


「…………英二」
「んー?」
「いつか、もしもでいいんだけどさ」
「んー」
「その時もまだ俺のコト好きで居てくれたら……」
「んー?」


精一杯、何でもないふり。
深呼吸、大石の心臓の音。どきどきが、制服越しに伝わってきて


――いや、違う これは


「…………俺と、結婚してくれる?」


呼吸が出来ないほど



どきどきが止まらない、俺の、心臓の音



「おーいし、本ト、ずるい……」
「え、英二?!」
「絶対結婚してあげるからちゅーして」
「ちょっ、待っ、英二!!」


今はまだ、これが精一杯。
でも、ずっとずっと。これからも永遠に、誰よりも君を好きでいる自信があるから。


いつか の 未来 で


「大石、だーいすきっ」


また同じ台詞を、君が言ってくれますように。
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